1.2 誤 差



(5)誤差の伝播

■誤差の計算

 計算機での算術演算の基本は加減乗除です。

加減乗除での誤差は以下のようになります。

  


■領域算術
 X1=10±1,X2=10±1として,X1とX2の演算結果の最大・最小は

以下の表のとおりとなります。

演算 区分 誤差の計算 最大
最小差
加算 最大 11 + 11 = 22 = 20 + 2 4
最小 9 + 9  = 18 = 20 - 2
減算 最大 11 - 9 =  2 = 0 + 2 4
最小 9 - 11 = -2 = 0 - 2
乗算 最大 11 * 11 = 121 = 100 + 21 40
最小 9 * 9 = 81 = 100 - 19
除算 最大 1 / 9 = 1.2222 = 1 + 0.2222 0.4040
最小 9 / 11 = 0.8181 = 1 - 0.1818


 しかし,すべてが危険側になるとは限りません。

誤差を打ち消すケースもあります。


■誤差分布

 連続的な加算を考えて見ましょう。

最初の数の最後の桁の数が+1または−1の四捨五入の誤差を

持っているものとします。

 この2つの状態を次のように書くものとします。

          

 次の数も同様に,最後の桁の数が+1または−1の四捨五入の誤差を

持っているものとしますと,加算によって次のような状態になりえます。

          

 すなわち, 0の状態が2個,+2が1個,−2が1個 となっていますので,

このことを次のように表現することとしましょう。

         


 2番目の加算では,次のようになります。

いわゆる,パスカルの三角形の形で進行します。



 3番目,4番目と進むと,以下のように中央部分の頻度が

多い傾向になっていきます。

      

 すなわち,最大,最小の誤差の頻度は少なくなっていきます。