1.2 誤 差



(1)なぜ誤差が問題となるのか?

 数値解析では,次のような理由から誤差の問題が大きな鍵となります。
 (a) 数値解では,解を求めるために仮定や近似を行うので,
   厳密な解の値を求めることはほぼできない。

 (b) コンピュータの実数は有限の桁で表現した近似値である。

 (c) 演算する前に
近似された値(例えばπ)を用いている。

 (d) 物理的な
数式モデルでも近似が行われている。

 したがって,有用な解を得るためには,
以下の点について明白にしておく必要があります。

 (a) いつ近似がなされたか?

 (b) 近似が解に及ぼす影響はどの程度か

■誤差の発生

 数値解析で誤差が発生するのは,以下のような箇所です。

 (a) 数学モデルを作るために単純化せざるをえないとき

    [例] 実際の気体の摩擦抵抗をシミュレーションする際,
        式中の相関関係で理想気体の法則を使う。

 (b)
測定装置の限界によるデータの誤差

 (c) 数学モデルの解を求める際の近似

 ここでは,上記(b),(c)を取り扱います。

■解析解でも近似することが多い

 解析的に問題を解く際に,近似することがよくあります。
たとえば,ここでは次のような振り子の問題を取り上げてみましょう。
        
 この問題を解く際,通常,
θが小さいものと仮定して,
    
とするのが,通常です。
 この仮定を入れないで,そのまま差分近似すると,
   
グラフ化すると
     
このように,初期値θが大きいと,この
仮定は成り立たないことが分かります。
[差分近似してグラフ化したExcel Fileはこちらから]

  (1) なぜ誤差が問題となるのか?

  (2) 有効桁の考え方

  (3) 数値解析における計算上の注意

  (4) 誤差を少なくするための計算の工夫

  (5) 誤差の伝播

  (6) モデル化による誤差